A nous, la Liberte!


 96年12月に公開質問を開始して以来、一度97年3月末時点で557人の方から頂いた回答を集計して発表しましたが、今回昨年10月末時点で集計を行ったところ、合計854人もの方からの回答をまとめることが出来ました。本当にどうもありがとう。集計結果は以下のとおりです。この集計結果と、大変遅くなりましたが、別途著名なクリエイター及び識者に対して行った同趣旨のアンケートに対する回答結果をまとめて、「Music on Internet」という論文を書き、12月17日にInternet Conference '97で発表しました。

  1. 全体の傾向
    (1) 3月末時点と10月末時点の集計結果を比べると、回答の傾向(各設問における選択肢毎の割合)はほぼ同じになっており、854人という回答数を考え併せると、今回のアンケートの集計結果はネットのユーザの考え方をかなり正確に反映していると言えると思います。
    全質問の回答数とパーセントグラフ
    (2) 具体的には、デジタル作品の送信、複製や改変などについて、総論としては作者の権利(著作権)を尊重すべきとの意見が大勢を占めていますが、具体論になると、作者の許諾なしに送信・複製・改変を行える範囲についての回答に顕著に示されているように、著作権に対する配慮が非常に甘くなっているように思えます。

    デジタル作品は送信・複製・改変しても品質が全く劣化しませんので、例えば友人に作品のコピーを渡すことは、その友人が新品の作品を無料で入手することに他なりません。また、ネットワーク上で作品を提供するのに必要な課金・認証技術は、個人への提供を前提にしています。更に、世界知的所有権機関(WIPO)などにおける著作権当局の議論でも、今や個人的な利用やRAM等への一時的蓄積のための複製まで複製権の対象とする方向が検討されています。これらの事実を考えると、デジタル化・ネットワーク化の時代における作品の送信・複製・改変については、個人単位での作品の使用、即ち作品を入手した人は作者の許諾なしに自分以外の人にその作品を使用させることは出来ないという形で作者の著作権を保護すべきではないでしょうか。



  2. 作品の送信・公開と受信
    (1) 作品の送信・公開と受信について、総論としては多くの人が作者の著作権を尊重すべきという姿勢を示しています。
  3. デジタル作品の複製・改変
    (1)複製について、総論としては多くの人が作者の著作権を尊重すべきという姿勢を示しています。
    • 私的利用ための複製は自由という現行規定のデジタル環境での妥当性について、
      ・82%の人が変更不要と回答
      ・14%の人がすべての複製について作者の許諾を必要とすべきと回答
      ・4%の人がすべての複製について作者の許諾を不要とすべきと回答
    (2)しかし、具体論になると、送信・公開の場合と同様に、考え方が非常に甘くなっているように思います。

    • 作者の許諾が不要である「私的利用のための複製」の範囲について、
      ・96%の人がバックアップを取るための複製も含まれると回答
      ・95%の人が自分が所有する別端末での利用のための複製も含まれると回答
      ・63%の人が家族に渡すための複製も含まれると回答
      ・41%の人が2〜3人の友人に渡すための複製も含まれると回答
      ・19%の人が学校の生徒に教材として渡すための複製も含まれると回答
      ・12%の人が10人以上の友人に渡すための複製も含まれると回答
      ・8%の人が会社の仲間に業務上渡すための複製も含まれると回答

      作者の許諾なしに複製できると考えている範囲が広すぎると思います。現行著作権法上は、例えば家族に渡す場合や学校の教材として配布する場合は作者の許諾は不要ですが、デジタルの特性を考えると、デジタル作品についても同じ扱いでいいとは思えません。送信・公開の場合と同様に、作者の許諾なしに複製できる範囲が広すぎると思います。


    • 作者の許諾が不要である「私的利用のための改変」の範囲について、
      ・94%の人が改変により作成された作品を自分一人で楽しむ場合も含まれると回答
      ・77%の人が改変により作成された作品を家族で楽しむ場合も含まれると回答
      ・55%の人が改変により作成された作品を2〜3人の友人に渡す場合も含まれると回答
      ・25%の人が改変により作成された作品を10人以上の友人に渡す場合も含まれると回
       答
      ・23%の人が改変により作成された作品をを無料で希望者に渡す場合も含まれると回答
      ・6%の人が改変により作成された作品を販売する場合も含まれると回答

      同様に、作者の許諾なしに改変できる範囲が広すぎると思います。


  4. デジタル化権
    多くの人が、アナログ作品のデジタル化のために投資を行った者は何らかの形でその投資が報われるべきと考えているようです。