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音楽著作権の独占管理改めよ



 音楽などの著作物を創作した人はその作品について著作権を有することになる。著作物を利用するときは、原則として著作者の許諾を得なければならない。それによって、作品の利用に対する著作者のコントロールと報酬の確保がはかられているわけである。

 しかし、音楽の場合には、作詞・作曲をした著作者自身が作品の利用を許諾するかしないかを決めたり、許諾する場合の条件を決めたりする自由がほとんど奪われてしまっている。これは、社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)が、音楽分野における唯一の著作権管理団体として、その管理業務を独占してしまっているからである。

 著作権管理団体とは、著作権者から著作権の委託を受け、その権利を守るとともに、音楽を利用する人々が簡単に権利処理ができるよう、著作権者に代わって利用の許諾を行う団体である。音楽は、様々に利用されるため、権利者も、自分の作品の利用の状況についてすべて把握することは難しい。だから権利者に代わって、著作権を管理する団体が必要であること自体に異議はない。

 しかし現状は、音楽著作権の仲介業務は仲介業務法によって規制されており、仲介業務を行おうとする者は、文化庁長官の許可を受けなければならない。しかも1939年の仲介業務法制定当時から、音楽著作権の仲介業務を行う団体として許可を受けているのはJASRACだけという独占状態である。さらにJASRACに仲介業務を委託する場合、たとえば演奏権だけの仲介を委託したり、著作者が著作権の一部を留保したりすることは認められていない。著作権のすべてを信託譲渡することになっており、競争原理がまったく働かない状態になっている。

 このように自由競争がまったく行われない状況では、著作権者と利用者双方の求めるサービスが、適正価格で迅速に提供されることは望めない。

 インターネットに見られるように、これからは著作物の新しい利用形態が次々に登場していくと考えられる。ところが、現在のJASRAC一元管理の下では、新しい利用形態への対応や使用料の改定が十分に行われておらず、利用者からのサービス付加の要求に柔軟に対応できていない。このままでは、インターネットのような新しいメディアを通じて作品提供を行う場合でも、自由な流通単位の設定や作品自体の価値に見合った自由な価格設定は困難である。さらには、今後の技術進歩に伴い様々な新しいサービスが生み出された場合にも、その実用化が困難になると予測される。このように、JASRACによる独占的な集中管理体制は、音楽産業の発展を阻害する状況となっているのである。

 この事態を打開するためには、現行制度を改め、複数の団体の参入を可能にする競争原理を導入し、利用者にも著作権者にも選択の幅を与えるようにするほかないであろう。

 また、多岐にわたる権利を一括して信託譲渡することしか許さない現在のシステムは、自由競争を阻害するばかりでなく、作品の利用条件や対価を自らの意思によって決定する著作者の自由を完全に奪ってしまうものである。これも改める必要がある。特に、ネットワークにおける音楽の配信については、著作者が利用条件を設定して著作権流通を管理することが可能であり、一律に管理団体に信託させる必要は全くない。その他の権利についても、同様に自己の直接管理とすべきか、管理団体に管理を委託すべきかは著作者が自由にコントロールできるようにすべきであり、管理団体に委託する権利の内容は、著作者が選択できるようにすべきである。

 ネットワークによる作品の発表が可能となった現在、自分の作品をいつ、どこで、どのような方法で発表・提供するかの自由も必要である。文化的な豊かさは、作者の精神的自由が保障されないところにはあり得ないからである。

 私は、このような危機感を持っており、2月25日、文化庁著作権審議会の集中管理についての小委員会でも、参考人としてその是正を求める意見を述べた。著作権管理業務に公正な競争を導入し、新しい時代の文化の創造に適した環境が作られるよう願ってやまない。



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